出産を機にトマト農家デビュー 子育てと仕事を両立 三浦綾佳ドロップ社長 #出世ナビ #NIKKEISTYLE #新着 #ドロップ #フルーツトマト #三浦綾佳 #水戸市 #子育て #仕事 #太陽光発電 #農業 #トマト http://style.nikkei.com/article/DGXZZO17463000Y7A600C1000000
丸の内キャリア塾 出産を機にトマト農家デビュー 子育てと仕事を両立 三浦綾佳ドロップ社長 清潔で明るいファームでフルーツトマトを生産する三浦綾佳さん。茨城県水戸市で農業法人、ドロップを経営する、1児を持つ若い母親だ。広島県出身で農家にも縁もゆかりもない家庭に生まれ育った三浦さんが、なぜ水戸で農業をすることを選んだのか。今後の女性の働き方として大いに参考になる、バイタリティーあふれるキャリア選択を紹介する。 ――販売の仕事がとても好きだとうかがっています。 栄養士の資格を取得して短大を卒業しましたが、販売の仕事がしたくてアパレル会社に就職しました。やがてもっといろいろなジャンルのものを扱いたくなり転職。イベント会社で住宅展示場の受付や浄水器・太陽光発電システムなどの販売支援のアルバイトをしました。イベント会場で高い関心を持つ来場者を見つけ、見積もりを取ってもらい成約率の高い状態でアポイントを取って営業につなぐ仕事です。どうやったら成績を伸ばせるか、それには他の人より知識を持たなければと、太陽光発電などについて猛勉強しました。努力が成績につながっていくのが楽しくのめりこみました。 ――結婚して夫婦で自営の道を選んでいます。 大手広告代理店に勤務していた夫とイベントの仕事で出会い結婚し東京で生活を始めました。そして、夫婦で広告代理店を立ち上げました。それが今の会社の前身です。男女共同参画や農業のICT(情報通信技術)化などの仕事をさせてもらい、毎日が充実していました。そのタイミングで妊娠しました。 ――それが農業への転業につながった。 子育てしながらそれまでの業態を続けるのは難しいと思ったのです。でも仕事をやめる選択はしたくない。その中で、農業や飲食店なら時間管理が比較的、自分で思うようにできるのではないかと漠然と思っていました。 でも農業に対しては、長時間労働や収入の面で大変というネガティブなイメージを払拭できないでいたのです。不器用なので働くことと子育てを分けることはおそらく難しく、無理をすればどちらかにしわ寄せがいく。でもどちらにも全力投球したいと思っていたのです。どうしたら子育て中でも無理をせずに楽しんで働けて十分な所得を得られるのか、考えていました。 ――農業参入に踏み切った決め手は テレビ番組でアイメック農法を知ったことです。ハイドロゲル膜を用い、見える化された環境で未経験者でも分かりやすく高糖度・高栄養価の野菜が安定的に作れる農法です。すぐに説明を聞きに開発元へ出かけました。ファームの中で栽培することで、天候不順のリスクも最小限に抑えられる。これなら時間管理がしやすく、働くママでも働きやすい職場にできそう、自分がプロデュースして販売もできると決意。伯父が水戸で農業を営み、農業の苦労を知っていた夫も、「これなら大丈夫」と背中を押してくれました。 女性に優しいファームで高品質のトマトをプロデュース ――そこから本格的に準備が始まったのですね。 全国規模で農地を探し、結局、後継者がいない夫の伯父に水戸の農地を見せてもらい、ロケーションにほれ込みました。「ここだ!」と。その後は乳児を抱えて農法の研修を受け、野菜のことに詳しくなろうと野菜ソムリエプロの資格を取得するために勉強しました。 一番大きな関門は低利融資を受けるための新規就農者の認定。融資を受けられなければ始められません。それには妥当な事業計画を示す必要があります。 一般的な農家は生産物を卸すまでが仕事ですが、私は栽培したものを商品化してお客様に渡すところまで含めて生産と捉えています。フルーツトマトを生産しようと決めていた私は、付加価値を高めてブランド化・直販する事業計画を練り上げ無利子での融資にこぎ着けることができました。 ――ファーム建設で重視したことは。 女性の働きやすさです。農地には電気も水も来ていませんでしたので、まずは井戸を掘って水を、電柱を立てて電気を引くところから始めました。ファームには清潔なトイレやシャワールームも整備しました。 ――フルーツトマトの商品化で工夫していることは。 まずはおいしいと思ってもらえることが大前提なので、売り場での試食で得た感想を基に様々な調整を加え、少しでもおいしく味わっていただけるよう常に改良をしています。 きれいなパッケージを開発し、「ドロップファームの美容トマト」の名で商品登録し、東京都内の百貨店などでも販売しています。広告代理業のノウハウも存分に投入しました。ジュースやジャムにも加工・販売しています。離乳食としても使えるトマトジュースとしてママ世代にも好評です。 ――就農して2年。2人の正社員と5人のパートを採用しています。どのような勤務体系を心掛けていますか。 自分も小さい子の母親なので、自分が働きやすい職場にすれば従業員も働きやすくなると思い、フレックスタイム制と休暇制度を充実させています。農業でありながら5日間の夏休みを取れるようにしています。主に子育て世代の女性が応募してくれますが、農業だからというより働きやすさで選んだという方が多いですね。現在の従業員も農業経験者は2人だけです。 ――人材教育に積極的です。 子育て中の女性もどんどんキャリアアップしてほしい。いいトマトをつくって高く買ってもらえる状況を続けられるようきちんと生産管理ができ、将来的な生産拡大にも対応できるよう、農場チーフの育成に力を入れています。現在の農場チーフは農業学校を卒業しているので、彼女の知識をベースに農業未経験の人を導いてもらっています。 観光農園やカフェ開設が次の目標 ――農林水産省の農業女子プロジェクトにも参加しています。 就農を決めた段階でモデルケースがなかったので、私がならなければと農業女子プロジェクトに参加し、大学などで講演もさせてもらっています。様々な学部の学生が聴きにきてくれて、新しい農業に変わっていく息吹を感じています。 ――今後の目標は。 あと3年程度でブランドを確立して会社の基盤を固め、その後は観光農園や、子育て中の女性が憩えてトマトを活用した料理を提供できるカフェなど、地域活性化にもつながる新しいビジネスにも力を入れていきたいと思っています。 ――働く女性にメッセージを。 自分が挑戦したいことに対してネガティブな要素はきっと出てきます。それがあっても自分のやりたいことを諦めないことがすごく大事だと、僭越(せんえつ)ながら思います。子どもを抱えていると、どうしても諦めたくなることもあります。でもそこで諦めてしまっては、自分の強みであるやりたいことまで諦めることになる。 私自身、農業をやると決め、研修を受けながら融資が決まるまでの間、つまり本当に農業ができるかどうか分からない状態の期間、精神的にも試練でした。慣れた仕事を離れることも不安でした。でも明確なビジョンと諦めない強い意志があったからこそ今があると思っています。